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河川工事における画期的な濁水対策

 昨年の令和3年12月8日と少し前になりますが、笛吹川水系日川で行われている砂防堰堤のスリット化工事を視察に行きました。

 砂防堰堤や治山堰堤など落差のある河川横断工作物ができると、①落差による遡上阻害、②落下による衝撃の影響、③堰堤周辺の物理的環境の変化、④連続性の分断、⑤河原が広がることによる落葉・落下昆虫の減少、⑥直射日光による水温上昇などの影響が生じます。

 特に物理的環境の変化とすれば、堰堤上流側では土砂の堆積に伴い河川勾配が緩和され、それにより流速が低下で河床材料が小さくなり、その結果浅く広く流れるようになります。つまり大きな石と淵がなくなります。また、堰堤下流側では直下にプールができるものの、出水のピークを過ぎてから小粒径の土砂が流出することにより下流域で淵の消失が生じるなどして、魚が住みにくくなります。

 堰堤をスリット化することで、これらの問題は大幅に改善することが可能です。加えて、防災上も新たな堰堤を設置するより、大幅にコストダウンして、整備率をあげることができます。ただし耐久性やその機能については、まだまだ検討が必要な点もあるようです。

 

 さて、今回この視察の目的は、濁水対策それもかなり画期的な方法についてです。

 工事による濁水が下流の河川環境に影響を与えるのは言わずもがなですが、これを回避するため通常は沈殿池を設置し、その上澄みを流すことで対処されています。ただし、今回の手法は、濁った水を沈殿させるのではなく、濁った水を発生させないという発想の転換に基づくものです。

 

 今回の工事では、掘削した施工箇所へ浸透水が湧出し、作業を行うことで湧出水が濁水となり、この濁水を作業の支障にならいようにするため河川へ排水するようになることが事前に想定されました。

 そこで、施工箇所の上流側で地中から湧出してくる浸透水を濁水になる前に吸い上げて、施工箇所への流入を殆どなくすことで、濁水の発生を未然に防ぐ対策が行われました。具体的な内容は次のとおりです。

 

 1. 堰堤上流の河床を1m掘削し深みを設置(地下水位低下措置)
 2. 塩ビ有孔管を縦方向に置き、水中ポンプを内部に挿入(地下水くみ上げ)
 3. 深み内部を現地発生石で埋戻 フィルター層設置(目詰防止措置)
 4. 現地発生石上部にブルーシートを張る(上部からの砂流入防止措置)
 5. ブルーシート上部に覆い土(フィルター層保護)

 加えて、 水中ポンプ初期排水時の対策として、ポンプ排水初期には、フィルター層に溜まった濁水を排水するため、事前に処理用水タンクを用意し、水に混じる泥などをタンク内で沈殿させ、上部から水を分離、排水する対応が行われています。

 

 

 

 この日は設置から日数が経っているので、汲み上げる水も、放水する水にも全く濁りはありませんでした。何もしなければ、この毎秒数㍑分の水が濁水となって出ていたのでしょう。

 

 ところで、実はこの現場ではもう一つ土砂の流出対策も取られています。流路切替の際、現地発生石で多段式落差工を設置することで、新しい流路の洗掘や砂泥の流出を抑制し、流出した砂も沈砂池で回収するようになっています。

 川筋切換作業時の砂流出防止の具体的な対策は、次のとおりです。

①河床部洗堀防止石敷詰
 1. 仮水路パイプ完了後、大型土のうを下流の両岸に設置(護岸崩壊防止措置)
 2. 現地発生石を河床部に敷詰(流水による河床洗堀防止措置)

 

 

② 川筋 落差工(現地発生石)
 1. 川筋位置を決め、一定の勾配で河道内を掘削
 2. 現地発生石で落差工を数箇所設置(流速を緩やかにし氾濫の防止、流出土の沈砂)
 3. 河床面に現地発生石を敷詰(流水による河床洗堀防止措置)

 

 

③ 切換後沈砂池全景
 1. 堰堤上流河床部を深さ1.5m、長さ10mの沈砂池を作成(砂の流失防止措置)
 2. 沈砂池の流入河床部に現地発生石を敷詰(河床洗堀防止措置)

 

 土砂の流出は、ほぼ1日で収まったとのことで、この日の沈砂池にはまだ余裕がある状況でした。

 ここまでやれば完璧です。現在考えられる対処としてはベストではないでしょうか。この処理を発想し、関係者に粘り強く提案していただいた峡東漁業協同組合の古屋さん、また、このような煩雑で経費のかかる作業に対し柔軟に対応し、素晴らしい事例を作っていただいた(株)高野建設の現場代理人さんに対し、厚く御礼申し上げます。

 ただしこれら対策には大きな問題点があります、今回行われた作業は、全て受注業者の任意仮設であるため、施工経費やポンプの電気代の多くは施工業者の負担となります。本来であれば、このような濁水対策の費用が設計に組み込まれていれば、施工業者さんにとっても、漁協にとっても有り難いのですが、そのようなシステムになっていないのが現状です。

 そうは言っても、このような有効な対策が広く普及されるよう、県漁連としても引きつづき努力したいと思っています。

 なお、今回の写真や図面は全て、(株)高野建設から提供していただきました。最後になりましたが、有り難うございます。

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